ショコラ: 「ご主人さま、デリバリーの準備出来ましたー! 確認お願いしまーすっ!」 嘉祥: 「了解、ちょっと待ってな」 嘉祥: 「えーと、ショート、チーズ、フルーツが2個ずつに……」 ショコラ: 「そわそわそわそわ」 嘉祥: 「ガトー、ミルフィーユ、モンブラン……」 ショコラ: 「うずうずうずうず」 嘉祥: 「うん、伝票通り間違いないな」 ショコラ: 「うわーい! じゃあ褒めてください! ナデナデ!!」 嘉祥: 「はいはい(なでなで)」 嘉祥: 「それじゃ、車とか人に気を付けて行って来いよ」 ショコラ: 「はーい、行ってきまーす!」 ショコラ: 「でも、あともうひとつ忘れ物ですよ?」 嘉祥: 「ん? 忘れたって、後は何も――」 ショコラ: 「行ってきますの、ちゅ♪」 嘉祥: 「ちょ、ショコラっ……!?」 ショコラ: 「えへへ♪ 照れてるご主人さまもかわいーですよ♪」 嘉祥: 「かわいーっておまえ、店の中では……!」 ショコラ: 「ショコラはご主人さまの恋ネコですから♪」 ショコラ: 「じゃあ気を付けて行ってきますねー!」 嘉祥: 「あ、ショコラ……!」 嘉祥: 「…………」 女性客A: 「へぇぇ。ショコラちゃんって、店長さんの恋ネコだったんですね?」 嘉祥: 「へ? あ、いや……」 嘉祥: 「まぁ、だったと言うか……その、はい……」 女性客B: 「あれだけ素直で可愛ければ、手も出しちゃうよね? あははー」 嘉祥: 「いや、その……すみません、勘弁して下さい……」 女性客A: 「あはは、別に照れることないじゃない」 女性客A: 「ネコがパートナーってのも今どき珍しくもないんだしね」 女性客B: 「その反応だと最近のことなの? 恋ネコになったのは」 嘉祥: 「すみません、こういう話は得意じゃないんで……」 女性客A: 「店長さんがそんな照れ方するの珍しー♪」 女性客B: 「じゃあ紅茶おかわりするからお話聞かせてよー♪」 嘉祥: 「すみません、仕事中なんで……」 バニラ: 「じー……」 嘉祥: 「……ふぅ、やっと帰ってくれたか」 さっきのお客を見送って一息。 ……ああいう色恋沙汰の話は苦手だ。 そもそも小さい頃から和菓子作りばっかりだったし。 どう返せばいいのか分からなくて疲れる。 バニラ: 「ご主人。レジ計終わった。チェックして」 嘉祥: 「ああ、分かった。ありがとうな」 バニラ: 「じー……」 嘉祥: 「……何怒ってんだよ、バニラ?」 バニラ: 「怒ってない。そう見えるのはご主人に心当たりがあるから」 嘉祥: 「ないから聞いてるんだって」 嘉祥: 「あ、腹でも減ったのか?」 嘉祥: 「だったらケーキ一個くらい食べてもいいぞ」 バニラ: 「ご主人は私を何だと思ってるの。ショコラじゃないんだから」 嘉祥: 「お前こそショコラを何だと思ってんだ」 別に機嫌悪くなったりはしないし。 『お腹が空きましたー!』って叫ぶくらいで。必死に。 バニラ: 「強いて言えば、さっきご主人が鼻の下伸ばしてたのが微妙。びよーんって」 嘉祥: 「何だその言い掛かり。いつ伸びてた」 バニラ: 「ショコラがデリバリー行ってるちょっとの間に油断ならない」 バニラ: 「一回寝たくらいでネコの全部を手に入れた気になってるとか」 バニラ: 「まさかご主人がえっちパティシエだとは思わなかった。ふむ」 バニラが腕を組んで鼻を鳴らす。 えっちパティシエて。 何というか語呂悪いなその響き。 バニラ: 「そもそも私たちというネコがいるのにデレデレと」 嘉祥: 「分かった分かった。デレデレしてないから大丈夫」 嘉祥: 「むしろああ言うのは苦手なんだって」 バニラ: 「そのやっつけ感に誠意を感じない。不可」 嘉祥: 「誤解だって。怒るなよ」 バニラ: 「怒ってない。私はいつでも冷静なネコって時雨も言ってた」 バニラ: 「私を差し置いてショコラとイチャイチャな上に、ショコラを弄んでるのが気に入らないだけ。ぷん」 ぷんって怒ってる擬音だろ……。 そもそも弄んでるとか言い掛かりだし。 まぁ話を統合するに、要は……。 嘉祥: 「嫉妬してるってことな」 嘉祥: 「悪い。今後は気をつけるよ」 バニラ: 「嫉妬じゃない。正当な意見だと私はアピール」 嘉祥: 「分かった分かった、ごめんな。もうちょっと自重するよ」 バニラ: 「その面倒であしらってる感がまた」 嘉祥: 「分かったって。よしよし」 頬をふくらませるバニラの頭を撫でる。 バニラでも嫉妬とかするんだなぁ。 もっとマイペースだと思ってたけど。 でもずっと一緒のショコラが見てくれなかったら当然か。 俺も飼い主として気をつけよう。 嘉祥: 「そう言えば」 バニラ: 「なに?」 嘉祥: 「バニラは発情期に入ってないのか?」 バニラ: 「ヘンタイ」 嘉祥: 「いやそうじゃなくて、体調的に心配って意味でな?」 バニラ: 「ヘンタイ。スケベ。えっちパティシエ」 嘉祥: 「……まぁ、問題ないならいいや」 ……本気で心配したんだけどな。 そう思いつつバニラの冷たい視線を浴び続けた。 嘉祥: 「ショコラ。ちょっと店番頼んでいいか?」 ショコラ: 「はーい、お任せあれ!」 嘉祥: 「バニラはちょっと厨房に頼む」 バニラ: 「ん? 私?」 バニラ: 「何かえっちな手伝いを強要されるヨカン」 嘉祥: 「どんな予感だ」 どうもまだ根に持ってるらしい。 さっきもショコラに何か吹き込んでたみたいだしなぁ。 とりあえず気を取り直して。 嘉祥: 「これから少しずつ、バニラにもケーキ作りを覚えてもらおうかと思ってな」 バニラ: 「おぉ、ケーキ作り……! ついにワンランク上のネコに……!」 バニラ: 「……でも何で私だけ? エロ目的?」 嘉祥: 「いい加減そのボケから離れて下さい」 バニラ: 「ちょっと気に入ってた。反省はしてない」 相変わらずの芸人気質。 別に反省までしなくてもいいけど。 嘉祥: 「まぁリアルな話。ショコラは看板ネコとしては文句ないけど」 嘉祥: 「でも、ケーキ作りは向いてないと思うしな」 バニラ: 「あー。ショコラは多分ノリで作っちゃうもんね。納得」 バニラも納得の人員配置だった。 趣味ならいいんだけどな、失敗しても。 嘉祥: 「まぁそんなわけで。まずは簡単な生地作りから教えるな?」 バニラ: 「よしきた。教えてもらってあげる」 バニラ: 「よろしくお願いします、ご主人先生。ぺこり」 意外にノリノリみたいだった。 バニラ: 「ご主人。固め、濃いめ、油(バター)マシマシね」 嘉祥: 「ウチはそういうお好みサービスとかないから」 バニラ: 「やったら流行るかも知れない。ナイスアイディア」 嘉祥: 「一個ずつ作るもんじゃないから無理だな」 嘉祥: 「余計なアレンジはいいから、今は基本を覚える」 バニラ: 「はーい。なんとなく頑張るー」 曖昧な返事をしながら細かくレシピ通りに材料を測る。 道具の扱いも物の名称もなかなかに覚えが早い。 文句も言わず、ちゃんと俺の言うことを覚えていく。 嘉祥: 「バニラは本当に飲み込みが早いな」 嘉祥: 「正直、手先の器用さとか思った以上だった」 バニラ: 「能あるネコはぐーたらなのだよ、ご主人先生」 満足気に無い胸を張る。 ……この制服はバニラには難易度が高かったのかも。 まぁ選んだの本人だし。 もしかしたらそういう売り方なのかもしれない。 一瞬、そんな余計なことを考える。 バニラ: 「というか時雨にも物覚え良いって言われてた。えへん」 嘉祥: 「そうなのか? それは初耳だ」 バニラ: 「別にわざわざそんなことも話さないしね」 バニラ: 「ご主人も他人にツッコまないタイプだし」 嘉祥: 「……確かに言われてみれば」 雑談はしててもお互いに深くはツッコまないと言うか。 バニラも自分のことを進んでしゃべるタイプでもないし。 バニラ自身のことって聞いたことはあまりない気がする。 バニラ: 「私はそういうご主人の距離感嫌いじゃない」 バニラ: 「ネコらしく自由にのんびりマイペースでいられるし」 いつも通りのトーンで微笑む。 バニラが居心地良いならそれが一番。 それは間違いなくそう。 そうなんだけど……。 嘉祥: 「バニラは、俺に干渉されるのは嫌か?」 バニラ: 「……へ? 干渉?」 目をぱちぱちと瞬かせて首を傾げる。 眉間にシワを寄せてあごに手を当てて思案。 そして手を叩いて俺の方へ向く。 バニラ: 「なるほど。口説き文句」 嘉祥: 「いい加減そこから離れろって」 ぺしっと軽くバニラの頭にツッコミ。 本当に真面目な話が出来ないなぁコイツは。 間を取り直して、正面からバニラを覗き込む。 嘉祥: 「俺は、もっとバニラとも近づきたいと思ったから」 バニラ: 「近づきたい? 今、近いけど?」 嘉祥: 「物理的な距離じゃなくて」 嘉祥: 「もっとバニラのことを知って、もっと仲良くなりたいってこと」 今度は優しく、ぽんぽんとバニラの頭を撫でた。 相変わらずきょとんとした顔で俺のことを見上げる。 嘉祥: 「今までの距離感もいいんだけどさ」 嘉祥: 「でも、俺ももうちゃんとした飼い主なわけだろ?」 嘉祥: 「だから……」 嘉祥: 「もっとバニラのことを知って、もっとバニラのことを理解したいんだ」 嘉祥: 「バニラだって、大事な俺のネコだから」 バニラ: 「ご主人……」 ショコラとの一件でもバニラに気を遣わせちゃったし。 バニラの言う通り、バニラのことを良く分かってなくて。 だからこそ、もっとちゃんと知りたいと思う。 これからはずっと3人でやってくわけだから。 バニラ: 「…………」 バニラ: 「……こういう、真面目な空気は苦手」 バニラ: 「ご主人だって、こんな堅いのとか苦手なくせに……」 ……バニラもこんな可愛いリアクションするんだな。 頬を赤くしながら、口を尖らせて。 口をもにょもにょとさせながら上目遣い。 意外に真正面からの耐性がないのかもしれない。 嘉祥: 「まぁ、キャラじゃないとは自分でも思うけど……」 嘉祥: 「でもちゃんとハッキリ言っときたかったんだ」 嘉祥: 「少なくとも、俺はこう思ってるってこと」 似合わない自分に苦笑いを浮かべながら、 ちゃんとバニラへ向けて本音を口にする。 バニラ: 「……私まで手篭めにしようとしてる」 嘉祥: 「違うって、だから――」 バニラ: 「……ん。分かってる。冗談」 バニラ: 「ご主人の気持ち、ちゃんと伝わったから大丈夫」 ……めちゃくちゃ可愛いな。 ごまかしじゃない笑顔。 普段見せない素直さが、思わずドキッと来る。 いやいやいやいや! 今俺は真面目なことを言ってたわけであって! バニラ可愛いとか思ってる場合じゃないって! バニラ: 「……くん、くん」 バニラ: 「あれ? この匂い……? くんくん……?」 嘉祥: 「ん? ど、どうしたバニラ?」 バニラ: 「何か……くん、すごく甘い匂い……くん」 嘉祥: 「え? ちょ、バニラ……?」 バニラ: 「くんくん、くんくん……♪」 バニラ: 「はぁ……すごい、美味しそうな甘い匂い……♪」 嘉祥: 「ちょ……ちょ、バニラさん……?」 嘉祥: 「その、近いんですけど……」 近いって言うか、もう密着してるレベルで。 バニラが俺の胸に顔を埋めて鼻を鳴らし続ける。 バニラ: 「ふぁ、すごく濃ゆい甘い匂い……♪」 バニラ: 「これ、あたまがとろーんってして、ふにゃぁ~って……♪」 バニラ: 「こっちの方からもっと……♪ ご主人……♪」 顔を上げて、俺の首筋に顔を押し当てる。 密着した身体と口唇の感触。 バニラの甘い匂いと柔らかさが身体全体から伝わって来る。 嘉祥: 「うぁっ……! ちょ、バニラっ……!」 バニラ: 「…………はっ!」 バニラ: 「ち、違……! 今のはフレーメン反応……!」 嘉祥: 「は? フレーメン反応って――」 バニラ: 「フレーメン反応。間違いなくフレーメン」 嘉祥: 「……まぁ、じゃあ、フレーメン反応ってことで」 バニラ: 「ふむ、よろしい。では私は通常業務に戻ります」 嘉祥: 「…………まぁ、いっか」 とりあえず俺もそういうことにした。 ショコラ: 「ありがとうございましたー!」 ショコラ: 「ご主人さまぁ~♪ ごろごろして下さい~ごろごろ~♪」 嘉祥: 「こら、営業中はダメだって言ってるだろが」 ショコラ: 「今はお客さんいないから大丈夫ですよ? ちょっとでいいんです!」 嘉祥: 「はいはい、じゃあちょっとだけな?」 ショコラ: 「うわーい、ごろごろごろごろ~♪」 ショコラ: 「よーし、充電バッチリ完了です!」 ショコラ: 「じゃあショコラはゴミ捨て行ってきますねー!」 嘉祥: 「……ったく。困ったもんだなぁ」 バニラ: 「じー」 嘉祥: 「ん、どうしたバニラ?」 バニラ: 「ご主人の顔の緩み具合を計測中。ぴぴぴ」 バニラ: 「判定。だるだる度ブルドック」 嘉祥: 「明らかに悪意を感じる判定だなそれ」 嘉祥: 「てかその前からずっとこっち見てただろ」 バニラ: 「見てない。私は真面目に仕事してた」 嘉祥: 「別に仕事さぼってるとか言ってないから」 バニラ: 「見てない。ご主人は自意識過剰だと思う」 嘉祥: 「いやだから」 バニラ: 「ヘンタイ」 嘉祥: 「もういいです」 明らかにさっきからじーっとこっちを見てるのに。 これは新手の反抗期か何かだろうか。 ネコに反抗期があるのか知らないけど。 嘉祥: 「とりあえず今日の分の売上集計は、と」 バニラは気にせずにレジに向かう。 バニラ: 「…………」 バニラ: 「…………(ぴとっ)」 嘉祥: 「…………ん?」 バニラ: 「くんくん、くんくんくん……」 バニラ: 「すーはぁ~……すぅぅーはぁぁ~……♪」 嘉祥: 「…………あの、バニラさん?」 バニラ: 「んん~? んんん~~?」 バニラ: 「にゃっ!? にゃにゃにゃっ!?」 バニラ: 「ご主人、何で私に背中を押し付けてるの」 嘉祥: 「いやいやいや」 嘉祥: 「バニラがくっついて来たんだろーが」 バニラ: 「……私が? ご主人に?」 バニラ: 「ん……? んんんん……???」 怪訝そうな顔でバニラが首を捻る。 ……見覚えのあるリアクション。 つい昨日にもこんなことがあったような。 嘉祥: 「バニラ、もしかしてお前」 バニラ: 「あ、私ゴミ捨て行ってくるので。失礼」 嘉祥: 「ゴミ捨てはショコラが今――」 嘉祥: 「…………」 昨日のショコラと同じように見えるけども。 もしかして、バニラも発情期なのか……? ショコラとは双子なわけだし。 同じ時期になっても不思議はないけど……。 嘉祥: 「……まだ昨日のショコラほどじゃないし」 嘉祥: 「とりあえずもう少し様子を見てみるか……」 ショコラ: 「お店のお掃除終わりましたー!」 ショコラ: 「いつもながら完璧な掃除ぶりに、我ながら惚れ惚れしちゃいます!」 ショコラ: 「なのでショコラはナデナデして褒めて欲しいです!」 嘉祥: 「よしよし、良く頑張ったな(なでなで)」 バニラ: 「テーブルの上、まだ拭いてないけど」 ショコラ: 「に゛ゃーっ! すぐに行って来ます! 翔ぶが如く! にゃーっ!」 嘉祥: 「相変わらず元気だなぁショコラは」 バニラ: 「それがショコラのいいところ」 嘉祥: 「それは確かに」 嘉祥: 「…………」 嘉祥: 「……その、バニラは大丈夫か?」 バニラ: 「大丈夫? 何が?」 嘉祥: 「いや、体調とかそういうの」 バニラ: 「特に何も。オールグリーン」 嘉祥: 「……そうか、それならいいんだけど」 まぁ確かに別にいつも通り。 ショコラが発情期の時は明らかにフラフラしてたし。 やっぱり別に発情期ってわけでもなさそうだ。 嘉祥: 「じゃあ俺も厨房の掃除あと少しで終わるから」 嘉祥: 「バニラはショコラ手伝ってやってくれ」 バニラ: 「了解、任せといて」 嘉祥: 「……ん? バニラ?」 バニラ: 「にゃぁ……ご主人……♪(すりすり)」 バニラ: 「くんくん、くんくん……うにゃぁ……♪」 バニラ: 「さっきよりも、なんか濃い……すりすり……♪」 嘉祥: 「お、おい、バニラ……?」 正面から俺に抱きついて来て、 甘い声を出しながら頬を擦りつけて来る。 嘉祥: 「ちょ、バニラ? 落ち着けって、な?」 バニラ: 「ふにゃぁ~……? 私はいつでもクレバーだって、時雨が……」 バニラ: 「……はっ!?」 バニラ: 「ち、違……! 今のはフレーメン反応……!」 嘉祥: 「いやいやいや、それはもういいから」 バニラ: 「フレーメンを超えるフレーメン。それが超フレーメン」 嘉祥: 「いや鈴の試験勉強の時に本物のフレーメン顔見てるし」 嘉祥: 「それに、発情期だった場合は体調を崩すってお前が」 バニラ: 「違う。決して私は発情期に非ず。そんな恥ずかしいこと」 嘉祥: 「いや恥ずかしいとかじゃなくてな……」 バニラと押し問答。 てか発情期って恥ずかしいのか。 ネコに羞恥心はないものだと思ってたけど……。 ショコラ: 「…………(じー)」 嘉祥: 「あ、ショコラ」 バニラ: 「どうしたの、そんな顔して」 ショコラ: 「……バニラ?」 バニラ: 「にゃ、にゃぁっ!? ちょ、ショコラっ……!」 ショコラ: 「ん……ちゅ、れろ、れ……はむ、ぢゅ……」 バニラ: 「にゃぁっ……! あ、ちょ、ショコラ……んっ、にゃぁぁっ……!」 バニラ: 「ショ、ショコラ……! な、何をっ……にゃ、んんっ……!」 ショコラ: 「にゃは、バニラの可愛い声……♪ れろ、ちゅっ、れる、れろ……♪」 ショコラの口唇と舌がバニラの首筋を這っていく。 粘った水音がする度にバニラが身体をよじる。 バニラ: 「はぁっ……だめ、ショコラ……! にゃ、やぁっ、はぁぁっ……!」 ショコラ: 「くす、全然身体に力入ってないにゃあ♪ バニラ、可愛い♪」 ショコラ: 「こんなとろーんとした可愛い顔、見たことないにゃあ。はぁ……♪」 嘉祥: 「お、おい、ショコラ……!」 ショコラ: 「くす。大丈夫ですよ、ご主人さま?」 嘉祥: 「大丈夫って……」 ショコラ: 「だって、バニラも発情期なんだもんね?」 バニラ: 「ち、違う……! 別に、私は……!」 ショコラ: 「くす、ネコ同士でごまかせるわけないでしょー?」 ショコラ: 「ほら、体中からこーんなに甘い匂いさせて……♪」 バニラ: 「ショ、ショコラ……!」 ショコラ: 「それに、バニラとはずっと一緒にいるんだから」 ショコラ: 「バニラだってショコラのこと、分かったんでしょ?」 バニラ: 「ショコラ……」 バニラが言葉をなくして俯く。 顔を赤くして、浅い呼吸を繰り返して。 何かを堪えるようにぎゅっと眉を寄せる。 嘉祥: 「……バニラ、そうなのか?」 飼い主として、バニラにもう一度尋ねる。 バニラ: 「…………」 困ったような上目遣いを俺に向けて。 答えるのを一瞬、ためらいながらも、 バニラ: 「…………こくり」 小さく首を頷かせた。 嘉祥: 「やっぱりそうだったのか」 流石に怪しいとは思ってたけども。 ……でも、だとするとやっぱり発散させないといけないわけで。 じゃないと体調を崩すと、バニラ自身が言ってたわけで。 でもそれって、ショコラと同じようにするってことで―― バニラ: 「…………」 いやいやいやいや!! いくら飼い主だって、そんな手の出し方は……!! ショコラ: 「ショコラとご主人さまがらぶらぶしてるの見て、バニラも欲しくなっちゃったんでしょ?」 バニラ: 「ち、違う……! 別に、そんなことじゃなくて……!」 ショコラ: 「そんな風にごまかしてもだめって、言ったばっかりでしょ?」 バニラ: 「あっ……! ショ、ショコラっ……!?」