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嘉祥: 「……よし」
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嘉祥: 「体調もバッチリ回復したし、今日からまた頑張らないと――」
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嘉祥: 「…………って」
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嘉祥: 「えっ……? えぇっ……?」
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嘉祥: 「な……こ、これは……一体、どういう……?」
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アズキ: 「うんめっ! これマジでうんめーな!」
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アズキ: 「洋菓子はアレだと思ってたけど悪くねーなはぐはぐはぐむぐ!」
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メイプル: 「アズキってば、本当に食べ方がきちゃないわねぇ」
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メイプル: 「誰も盗らないんだから、もう少し上品に食べなさいよ」
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メイプル: 「せっかくの美味しい紅茶がまずくなるでしょーが」
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シナモン: 「ショコラちゃんバニラちゃんとお揃いの制服だぁ♪」
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シナモン: 「かわいーなぁ、嬉しーなぁ♪ ナッちゃんも一緒だねー?」
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ココナツ: 「あう……その、私みたいなネコに……こういうのは似合わないんじゃないかと……」
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ココナツ: 「こういうのは、小さくて可愛いネコじゃないと……あうぅぅっ……」
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時雨: 「そんなことないですよ。素材が良ければ全て良しですから」
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時雨: 「ココナツは私の自慢のネコなんですから、堂々となさい堂々と」
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シナモン: 「そうだよー? ナッちゃんは背が高くてカッコいいネコだよー♪」
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ココナツ: 「うぅ……ぼくはそれがいやなのに……もっと可愛くなりたかったにゃぁ……」
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ショコラ: 「おかわりいっぱいあるよー♪」
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ショコラ: 「ショコラとご主人さまの初めての共同作業でいっぱい作ったから食べて食べてー♪」
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バニラ: 「紅茶もいっぱい種類ある」
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バニラ: 「覚えられないくらいいっぱいあるから一覧表作った。その番号で注文お願い」
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嘉祥: 「…………え? 何これ? どういうこと?」
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いつの間にか俺の店がネコカフェ状態。
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朝イチから予想外の光景に頭がついて来てくれない。
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時雨: 「おはようございます、兄さま」
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時雨: 「私は今回の一件で色々と考えたのです」
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晴れ晴れとした曇りの無い笑顔。
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他のネコたちも同じように笑顔を俺に向けている。
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つう、と冷たい汗が伝うのを感じながら、
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嘉祥: 「はぁ……考えたって、何を……?」
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何とかそれだけを口にする。
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時雨: 「今回の一件で、兄さまに無理をするなというのが無理なことがよく分かりました」
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時雨: 「ですが、私も妹として夜も眠れぬほど心配をさせられたのもまた事実……」
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時雨: 「ならば人員を増やして、兄さまの負担を減らすのが一番の得策と、時雨は考えたのです」
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嘉祥: 「…………はぁ」
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嘉祥: 「人員を増やすって言っても、現状のウチではですね……?」
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時雨: 「ご心配は無用です、兄さま」
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時雨: 「兄さまのためならば、私にお給金など不要ですから」
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嘉祥: 「いやいやいや」
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嘉祥: 「だってお前門限あるし、平日は学校だってあるんだから……」
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時雨: 「はい。ですので私一人ではなく、ネコたちが協力してくれるそうですから」
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時雨がネコたちへと振り返る。
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ココナツ: 「嘉祥さまのため、時雨さまの命とあれば」
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メイプル: 「しょーがないわね、時雨がお小遣いくらいは出してくれるんでしょ?」
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アズキ: 「ったく。めんどくせーけど飼いネコのつれーとこだよなぁ」
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シナモン: 「わたしは嘉祥さんの美味しいケーキとお茶を頂ければ十分です♪」
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時雨: 「全員鈴持ちの即戦力です。文句はありませんね?」
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ソレイユの制服に身を包んだネコたちが頷く。
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すでに揺るがない決定事項。
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明らかにここからくつがえる空気じゃない。
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嘉祥: 「いや、だから、ちょっと……」
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ショコラ: 「いらっしゃい、みんなー! 先輩として歓迎しちゃうよー♪」
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バニラ: 「またみんなと一緒、嬉しい。こうでなくちゃ」
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時雨: 「あぁ、まさか兄さまと一緒にお菓子を作れる日が来ようとは……!」
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時雨: 「時雨は、時雨は銀河一幸せな妹にございます……!」
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シナモン: 「良かったね、時雨ちゃん♪」
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シナモン: 「でも新しい門出に涙はダメだよー? はい、ハンカチつかってー」
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ココナツ: 「うぅ、時雨さまが嬉しいとぼくも嬉しい……!」
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ココナツ: 「良かったですね、良かったですね時雨さま……ほんとに……!」
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アズキ: 「指名ナンバー1になったらボーナス出んだよな?」
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アズキ: 「かーそしたら毎日ボーナスかー大トロ食い放題じゃねーか! たまんねー!」
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メイプル: 「またアズキはバカなことばっかり言って」
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メイプル: 「あたしがいるのにナンバー1取れる気でいるなんて。あははっ」
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嘉祥: 「いや、指名とかある店じゃないんですけども……」
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俺(店長)の意志など関係なく話が進む。
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進む、というかもう進んでいた。
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いやまぁそりゃあ、助かるっちゃもちろん助かるんだけども……。
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時雨: 「さぁさ、みんなお店を開けますよー? 準備はいいですか?」
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一同: 『「おーっ♪」』
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嘉祥: 「……ま、いっか」
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こうして、パティスリー『ラ・ソレイユ』は。
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『ネコパラダイス』と呼ばれるケーキ屋として、
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新しい一歩目を踏み出したのだった――
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