nekopara-scripts/vol2/jp/02_04_a.txt

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ココナツ: 「お兄ちゃん見て見て! 新しい仕事出来るようになったんだよ!」
ココナツ: 「通信販売の注文から伝票書きまでバッチリ! 褒めて褒めて~♪」
嘉祥: 「おーよしよし。頑張ったなココナツ」
ドヤ顔のココナツの頭を撫でてあげる。
ココナツ: 「ショコラが教えてくれたんだよーごろごろごろ~♪」
ココナツ: 「にゃ~♪ お兄ちゃんのなでなできもち~♪」
そのまま頬を俺の胸にすり寄せてくる。
体が大きくてもネコはネコなんだなぁ。
……ショコラやバニラと違って、すごく女の子らしい体つきだけど。
胸もお尻もボリューム感たっぷりだし。
何だか気になり始めるとココナツが女の子に見えて――
……って、いかんいかん!
ココナツは何も考えてなくて甘えて来てるだけ!
昨日、時雨にそそのかされたからって変な目で見るでないぞ嘉祥!
心の中で自分を戒める。
ココナツ: 「……お兄ちゃん、どうしたの?」
嘉祥: 「え? べ、別にどうもしないけど?」
ココナツ: 「何か今、すごく困った顔してたから……」
ココナツ: 「……こういうの、いやだった? 止めた方がいい?」
心配そうな上目遣いで俺を見る。
その顔からは計算など微塵も感じない。
やましいことを考えてしまった胸がチクリと痛む。
ココナツにバレないようにゆっくりと深呼吸。
もう一度優しくココナツを撫でて答える。
嘉祥: 「ココナツが甘えてくれるのが嫌なわけないだろ?」
嘉祥: 「可愛くてちょっと照れくさかっただけだよ」
ココナツ: 「照れくさい? いつもと同じなのに?」
ココナツ: 「くす、変なお兄ちゃんだにゃぁごろごろ~♪」
ただただ素直に体をすり寄せてくる。
ネコの愛情表現、これはネコなりの愛情表現、ただのネコの愛情表現……!!
どこが触れても柔らかい感触で。
雑念を追い払おうと呪文のように自分に言い聞かせる。
ショコラ: 「あ! ココちゃんがご主人さまにすりすりしてる!」
ショコラ: 「ご主人さま! ショコラも、ショコラもごろごろしてください! 一緒に!」
ココナツ: 「うん、じゃあショコラも一緒に~♪」
ショコラ: 「わーい! ココちゃんも大好きー! ごろごろごろ~♪」
嘉祥: 「いや一緒にってそんな無理矢理混ざられても……!」
ショコラがココナツと一緒に絡まって来る。
ショコラ: 「むむ!? むむむむむっ!?」
ココナツ: 「ん? どうしたのショコラ?」
ショコラ: 「……ココちゃん、ちょっといい?」
ショコラが俺から離れてココナツに抱きつく。
その抱き心地を確かめるように。
ココナツを何度もぎゅっとしては離れる。
ショコラ: 「ふむ……ふむふむ……ふむ……」
ココナツ: 「ど、どうしたのショコラ? ぼく、どうかした?」
ショコラ: 「ココちゃん、おっぱいふわふわ! めっちゃぽよぽよだよ!」
ショコラ: 「やばい、ちょーきもちいい! ふっかふかですにゃ!」
ココナツ: 「え……あ……そ、そう……?」
ショコラ: 「バニラとはまるでボリューム感が違うと言うか……」
ショコラ: 「こう、すっごくイイ感じでめっちゃふっかふか!」
ココナツ: 「は、はぁ……? それは……ありがと、なのかな……」
ショコラのテンションに若干戸惑いながら。
されるがままにむぎゅむぎゅと抱きつかれてるココナツ。
……まぁさっきまで俺も似たようなこと考えてたしなぁ。
ショコラの気持ちも良く分かると言うか……まぁ。
ショコラ: 「むむむむ……! むむむむむぅっ……!」
ショコラ: 「……これはご主人さまもえっちな顔しちゃうのも仕方ないにゃぁ」
ココナツ: 「は、はい……!? え、えっちな、顔……!?」
ショコラ: 「うん、えっちな顔。ご主人さまがココちゃんにごろごろされてウハウハしてた」
ココナツ: 「う、うはうは……!? うはうはって……」
目を丸くしながら顔を赤くして俺を見る。
嘉祥: 「…………いや、そんな目で見てないからな?」
思わず返答に変な間が空いてしまう。
……いやエロい目で見そうになった、と言うか。
そう見る前に自粛したと言うか……ねぇ?
……えっと、何て言えばいいんだろう。
思わぬ展開に言葉が出てこない。
ココナツ: 「あ、そ、そうだよね!? そんなわけないよね!?」
ココナツ: 「ぼくなんか、子供っぽくてそんな目で見れるわけないって言うか……!」
ココナツ: 「お兄ちゃんから見たら手の掛かるだけのネコって言うか……!」
ココナツ: 「そういう魅力とはネコとすっぽんって言うか……ねぇ?」
ココナツ: 「あくまでぼくはネコで、妹で、色気もなくて、頼りにならなくて……」
ココナツ: 「……って、自分で言ってて悲しくなって来たけど……あはは……」
何故か自虐を繰り返してヘコんでいく。
嘉祥: 「いやそんな意味で言ったわけじゃないけど……」
ココナツ: 「え? そんな意味じゃないって……」
ココナツ: 「…………」
ココナツ: 「お兄ちゃんは、ぼくのこと……その……」
ココナツ: 「……エッチな目で、見れるの……?」
嘉祥: 「…………はい?」
これまた予想外の返しに、思わず言葉に詰まる。
困ったような、期待してるような、そんな上目遣いで。
指先をもじもじとさせながら俺を覗き込む。
いや、それは……そういう風に見ないようにって、ことは……。
……気をつけなければ、そう見えちゃうってことで。
てかココナツは無邪気で素直で、確かに子供っぽけど……。
……でも、体付きはそこらのモデル並のスタイルなわけで。
いつもよりもほんのりと潤んだ瞳。
やけにココナツが色っぽい顔に見えて。
思わずココナツの体に視線が行ってしまう。
ショコラ: 「ココちゃんはめっちゃエッチだよ!」
ショコラ: 「今みたいな顔、ショコラも何かこう、ムラムラするもん! ムラムラ!」
ココナツ: 「む、むらむら……!? むらむらって……!?」
ショコラ: 「ね、ご主人さま? ムラムラしますよね?」
嘉祥: 「ショコラはムラムラとか言わないの!」
ショコラ: 「にゃー! ご主人さまもがもごもごががががが!!!!」
引っ掻き回しっぱなしのショコラの口を強引に押さえる。
ひとつ深呼吸をして、雰囲気を変えるようにココナツに話しかける。
嘉祥: 「ま、とりあえず今のは気にしなくていいからな?」
嘉祥: 「気を取り直して仕事するぞ、仕事」
嘉祥: 「ココナツも通販業務覚えたなら、宛先伝票の処理お願いしていいか?」
ココナツ: 「う、うん、分かった……」
ココナツ: 「じゃ、じゃあ、ぼく伝票書いて来るね! ちょっと待ってて!」
ぎこちなく頷いて、足早に表へと出て行く。
嘉祥: 「…………」
……正直、一回意識しちゃうと良くないな。
そもそもが可愛くて好意的に思ってるわけだし。
そういう風に意識をさせられると目のやり場に困るっていうか……。
時雨もショコラも煽って来るし、困ったもんだ。
嘉祥: 「…………ん、ショコラ?」
ふと沈黙してるショコラを見る。
ショコラ: 「んんん、んんんんん……っっっ……!」
ショコラ: 「ぷしゅー、ふしゅーっ……! う゛ぐんんんんん……んんんっ……!」
嘉祥: 「ショ、ショコラすまん! 鼻まで一緒に押さえてた!!」
嘉祥: 「しっかり! しっかりしろショコラー!!」
危うく恋ネコの命を奪ってしまうところだった。
バニラ: 「本日もソレイユ、閉店業務完了であります」
バニラ: 「みんなももう帰った。ちなみにショコラは上で着替えてる」
嘉祥: 「おう、お疲れ。ありがとな」
厨房に顔を出したバニラに手を上げて応える。
バニラ: 「仕込み、手伝うことある? あれば手伝う」
嘉祥: 「いや後はもうひとりで大丈夫だ」
嘉祥: 「バニラは上でテレビでも見てていいぞ」
バニラ: 「了解した。テレビでも見てることにする」
バニラ: 「でもその前にご主人にお伺い。いい?」
嘉祥: 「ん、どうした?」
バニラ: 「今日の後半、ココナツがやたらぼけっとしてたんだけど、何かあった?」
嘉祥: 「…………後半って?」
バニラ: 「具体的に言うと通販伝票ミスりまくり」
バニラ: 「私がフォローしといたから問題はないけど」
嘉祥: 「………………なるほど」
バニラ: 「何か心当たりが?」
嘉祥: 「……いやまぁ、別に……これと言っては……」
心当たりピンポイント。
思わず言葉を濁して視線を逸らす。
バニラ: 「ふーん……?」
バニラが何か言いたげに俺を覗き込んでくる。
……これは何か気付いて言って来てるのか?
それとも単純に怪しんでるだけなのか、どっちだ……?
バニラは何考えてるか分かりづらいから、こういう時はほんと分かりづらい……!
バニラ: 「ま、ご主人はネコジゴロだからね。色々仕方ない」
バニラ: 「何やらショコラもムラムラしてたし」
バニラ: 「ご主人のヘンタイ」
嘉祥: 「いやいやいや。そこからヘンタイに繋がる意味が分からん」
……マジで何が言いたいのか分からない。
いや、いつも通りのバニラって言えばいつも通りなんだけど……。
嘉祥: 「あ。そう言えばバニラ宛に荷物届いてたぞ、ラクテーン市場から」
嘉祥: 「こないだ鈴の更新祝いに注文してたやつじゃないか?」
とりあえず話題を逸らすことにする。
逃げの一手。
バニラ: 「ご主人、私は急用を思い出した。失礼つかまつる」
嘉祥: 「……何とか乗り切った、か」
2階にネコまっしぐらのバニラを見送って一息。
……別にやましいことがあるわけじゃないんだけど。
でも昼間のココナツの件はあんまり耳に入れたくもない話題だし……。
嘉祥: 「……やっぱり、意識しちゃうとなぁ」
思わずココナツのエロっぽい顔を思い出して。
ココナツの柔らかい体の感触も思い出してしまう。
……時雨もショコラもバニラもやたら煽ってくるけど。
……でも、ダメだよな。
何かずっと流されてばっかりの気がするし……。
俺ももういい歳なんだからしっかりせねば。うん。
ショコラ: 「ご主人さまー、ご主人さまー」
ショコラ: 「お仕事終わりましたかー? 終わりましたかー?」
嘉祥: 「いや見ての通りまだ終わってないけど」
ショコラ: 「むーなるほどーそうですかー終わってないのですかー」
不満そうな声をあげつつ。
俺の背中にむぎゅーとまとわりついてくる。
ショコラ: 「いつ終わりますか? どのくらいで終わりそうですか?」
嘉祥: 「いやそんな長くはかからないと思うけど……」
嘉祥: 「……どうした? 何か変だぞ?」
微妙に機嫌悪そうと言うか。
ショコラにしては微妙なアクション。
もっと分かりやすい性格だと思うんだけども。
ショコラ: 「んー、変ってかですねー?」
ショコラ: 「ショコラはよっきゅーふまんなのです」
ショコラ: 「恋ネコとして困るのでどうにかして欲しいなって思うのです」
実に分かりやすい理由だった。
さすがはショコラ。
ぐうの音も出ない。
ショコラ: 「だってですよ? 最近ごぶさたってやつだったじゃにゃいですかー?」
ショコラ: 「それなのに昼間にムラムラしちゃってから、ずっとムラムラなんですにゃー」
ショコラ: 「むしろ今までちゃんと我慢したんですにゃーにゃー?」
まさにネコ撫で声。
にゃーにゃー甘えた声を出して絡みついてくる。
バニラが『何やらムラムラしてた』って言ってたまんまだった。
ショコラ: 「バニラはラクテーン市場から届いた動物DVDに6時間は夢中ですし……♪」
ショコラ: 「ね? ご主人さま……」
ショコラ: 「ん、ちゅ……れろ、ちゅ……ん、、れる、れろ……はむ、ちゅ……♪」
ショコラ: 「ぷは……♪ くす、ご主人さまとのちゅー、好きです……ん……」
ショコラ: 「んん、はむ、れろ……ん、ちゅる、ぢゅ……える、れろ……ぢゅる、ちゅ……♪」
ショコラ: 「はぁ、ご主人さまぁ……♪ ショコラのむらむら度、伝わりましたかにゃ……?」
俺とショコラの間に唾液を伝わせながら。
すっかりとトロけた瞳を細めて微笑む。
嘉祥: 「……ほんとにエロいな、ショコラは」
ショコラ: 「だって、大好きなご主人さまですから当たり前にゃないですかぁ……♪」
ショコラ: 「ネコは素直なんですよ? キモチも、体も……♪」
ショコラ: 「そのくらい、知ってますよね……?」
ショコラ: 「もう何度も何度もショコラとえっち、してるんですから……♪」
嘉祥: 「……そうだな、誰よりも俺が一番良く知ってる」
ショコラ: 「にゃは……♪ ご主人さまに知り尽くされちゃってますにゃぁ……♪」
ショコラ: 「じゃあもっとえっちなちゅー、したいです……」
ショコラ: 「はむ、れろ、ぢゅる……じゅる、ぢゅるる……ぢゅ……♪」
ショコラ: 「えろ、れるれろ……♪ は、む……ぢゅる……じゅるるる、ぢゅる……♪」
俺の首に両手を回しながら。
舌を深く差し入れて俺をかき回してくる。
唾液が口唇からこぼれるのも気にせずに。
エロい音を立てながら俺の唾液を飲み込んでいく。
ショコラ: 「はぁ、ご主人さまのツバ……美味しいです……♪」
ショコラ: 「じゃあ、次はもっと――――」
ココナツ: 「あ……っ……!」
ココナツ: 「お、おにい……ちゃん……!? ショコラ……!?」
ドアを開けたココナツが目を丸くする。
俺とショコラを見て一瞬固まってから。
すぐに察したように顔を真っ赤にして俯く。
ココナツ: 「ご、ごめん、なさい……! その、ぼ、ぼく……!」
ココナツ: 「ちょっと、お兄ちゃんとお話がしたくて……! そのっ……!」
ココナツ: 「だから、別に……その、ふたりの邪魔をしようとしたわけじゃなくて……!」
目をぎゅっとつぶって。
申し訳なさそうに小さく頭を振る。
嘉祥: 「いや、こっちこそ、その……悪い……」
ココナツ: 「ち、違うよ……! 悪いのは……ぼく、だから……!」
ココナツ: 「……恋人だもん、そういうコトだって……その、知らないわけじゃないし……」
ココナツ: 「~~~~っっっ……!」
ココナツ: 「ぼ、ぼく何言ってるんだろ! ごめんなさい! ぼく帰るね!」
嘉祥: 「あ、ちょ、ちょっと待った!」
ココナツの肩を捕まえて引き止める。
ココナツ: 「ふぁっ……♪」
嘉祥: 「あ、悪い……! 強く掴みすぎて……!」
ココナツ: 「あ、いや……今のは、痛かったわけじゃなくて……」
ココナツ: 「ちょ、ちょっといきなりだったから、びっくりしちゃっただけで……」
ココナツ: 「…………」
ココナツ: 「……お兄ちゃん……その……」
ココナツ: 「……手、離して……?」
嘉祥: 「あ……! ごめん、悪い……!」
ココナツに触れっぱなしだった手を慌てて離す。
ココナツ: 「…………」
すぐ目と鼻の先。
ココナツが指先をもじもじと弄びながら。
切なそうな上目遣いを俺に向ける。
ココナツ: 「……おにい……ちゃん」
……勢いで呼び止めてしまったけど。
……これからどうすればいいんだろうか?
ショコラとのことを言い訳するのも何か違うし……。
かと言って開き直るのも、話を逸らすのも違う気がするし……。
何も言えないまま時間だけが過ぎていく。
ココナツ: 「……ごめんなさい」
嘉祥: 「え? な、何が……?」
ココナツ: 「……何も言わずに、逃げようとしちゃったから」
ココナツ: 「だから、ごめんなさいって……」
視線を迷わせながら。
消え入りそうな声でそう呟く。
ぎゅっと自分の体を抱いて。
顔を赤くしながら言葉を続ける。
ココナツ: 「……その、あの可愛くて無邪気なショコラがね?」
ココナツ: 「あんな顔で、あんなことしてたから……」
ココナツ: 「ぼく、すっごく驚いちゃって……」
ココナツ: 「恋人なんだから、当たり前のことなのに……」
ココナツ: 「ぼくの方が、お姉ちゃんなのに……その……」
ココナツ: 「……ああいうこと、したことないから……知らなくて……」
切なそうな吐息を吐き出して。
口唇の端を噛んで伏せていた視線を俺に向ける。
ココナツ: 「……心臓が、死んじゃうかと思うくらいドキドキしちゃって」
ココナツ: 「頭がかあっと熱くなって、真っ白になっちゃって……」
ココナツ: 「足に力が入らなくなって、しゃがみ込んじゃいそうになっちゃって……」
ココナツ: 「それで、なんかわけわかんなくなっちゃって……」
ココナツ: 「うぅ……お兄ちゃぁん、ごめんなさいぃ……」
色違いの切れ長な瞳が。
甘く濡れてるみたいに滲んで見える。
自分の体を抱いてる細い指先を。
ぎゅっと腕に食い込ませながら甘えるような上目遣い。
半開きの口唇からは濡れた吐息を浅く繰り返して。
……めちゃくちゃエロい。
いつものハツラツとしたココナツじゃなくて。
熱に浮かされたような『女』の表情。
甘い声に背中をゾクリと撫でられて。
思わずココナツを抱きしめたくなるのを堪える。
ショコラ: 「くす、ココちゃ~ん?」
ココナツ: 「ショ、ショコラ……?」